それぞれの長い一日
日本の深刻な危機。東日本大震災はこれから生涯忘れられない一日になる。
私はこの日、東京日比谷のビルでセミナーの最中だった。初めのうちは地震慣れしている日本人のこと、余裕で無視していたが・・・長い。段々大きくなる。壇上のパネルやカーテンがワサワサ揺れ出し、建物からは不気味なきしみ音。大きい!壇上から講演者も跳び降りる。会場ドアが開けられ誘導が始まる。秩序ある日本人。誰も我先にと押したりしない。我々の仲間は11人。
外に出ると、ガラスが落ちて来たりするのですぐにビルから離れる。誰かが『皇居方面へ!』皆ゾロゾロ芝生のある公園へ向かって歩く。と、余震だ!『皆しゃがんで!』
さて、多分帰れない。交通機関は全てストップするに違いない。取り敢えず座れて暖が取れる場所を確保しなきゃ!行き先は帝国ホテルに決まった。道に溢れる人垣を逆走しながら帝国ホテルへ向かいようやく辿り着いた時には、かなりの人がホテルに待機していた。
ホテルの予約はキャンセル待ちも受け付けないとのこと。『夜になったらロビーから追い出される?』『そんなこと致しません、ご安心ください』・・・馬鹿な質問をした。
天下の帝国ホテルは微に入り細に穿った対応で、水・乾パン・毛布などの配布、水が出る衛生的なトイレに温度管理されたエアコン。帰宅難民の中では、誰よりも恵まれた環境の中で一夜を過ごしたに違いない。またソファーの隣に座った男性が、たまたま居合わせた我々を気遣ってくれ、椅子数を揃えてくれたり近くのコンビニへ行って食べ物を買って来てくれたりと、『地獄に仏』とはまさにこのこと。人の真価はこういう時に問われるんだろうな。
長い夜が明けるとホテル側がパンと温かいスープを配ってくれた。その美味しいこと・・・
いつか普及したら、きっと帝国ホテルに宿泊しよう!と皆で誓った。
この度被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。